ルイ・ヴィトン

今では世界中の定番であるルイ・ヴィトン製品。

高額なお金さえ払えば、現在では誰でもヴィトン製品を手に入れることができますが、
創設者ルイ・ヴィトン氏(Louis Vuitton)が生まれた1821年は、まだまだ貴族社会が
確たる地位を確立していて、それなりの格差社会が存在しました。

当時の、今でいうデザイナーというのは非常に身分が低く、美しい装飾品を制作して
貴族や王族に献上するという立場でした。

そんな時代背景のもと、ルイ・ヴィトンは故郷を去ってパリに到着、マレシャルという
トランク製作者の元で、トランク作りの見習いをするようになります。

1854年に独立し、それまで養ってきたトランクに関するノウハウを自分なりにアレンジして
デザインを始め、やがてナポレオン3世の妻・ユージェニーのお抱えトランク業者になります。

このことで、ヴィトンは社会的信頼を得るようになり、事業拡大に繋がることになりました。

最初にヴィトンが登場させたのは、トランクの上に布地を貼るという手法のものでしたが、
すぐにコピーが出回るようになりました。

そこで今度は、よりコピーされにくい「ストライプ・キャンバス」という布地に変更
したのですが、それも暫く経つとコピーが出回るようになり、今でも変わらない
コピー商品の問題を早くも抱えることになりました。

ヴィトンが亡くなったあと、事業は息子のジョルジュに引き継がれます。

後継者の時代

トランク専門店としてオープンした「ルイ・ヴィトン」は、創設者の死後、
息子のジョルジュ・ヴィトン(George Vuitton)、
更にその息子のガストン・ルイ・ヴィトン(Gaston Louis-Vuitton)に
事業が引き継がれていきます。

いちトランク店を世界的に広めたのは、ジョルジュ・ヴィトンです。

ジョルジュには優れた商才があり、自身のブランドのトランクを大量に持ち渡米し、
自ら売って回ったり、コンペに出品したりするなど、海外に向けて積極的にアピール
していきます。

そして、コピー商品防止のために、ベージュとブラウンのチェス盤のようなデザイン
「ダミエ・ライン」を考案。

これは、商標登録されました。

現在でも「LV」柄が定番になっている「モノグラム」も、ジョルジュによる案で
作られました。

この自社ロゴを製品に印刷するというやり方は、ヴィトンが初めて用いた手法とされ、
以後ディオールやグッチが、同じようにモノグラム柄の製品を発売するくらいの影響力を
持ちました。

そして、ジョルジュはトランク専門店の枠から一気にバッグ部門にも事業を広げ、
そこでも成功を収めます。

ジョルジュが手掛けたデザイン数は、1936年に死去するまでに700にものぼったと
いわれています。

ジョルジュの死後、事業はその息子に引き継がれることになりますが、同時にヴィトン社は、
第二次大戦の戦乱に巻き込まれていきます。

戦乱の中で

20世紀に入ると、人々の暮らしががらりと変わります。

貴族社会は低迷し、更に、第一次、第二次大戦の中で、人々は着飾ることよりも
自分の身を守るために必死でした。

戦争は、格差社会も混乱させたのです。

そのような中、第二次大戦には、あのナチスドイツが台頭し、フランスも占領されました。

そして、ヴィトン社は、ナチスと友好関係を持つことを決断しました。

ナチスには絶対に逆らわず非常に友好的で、ヴィトンの店先では、「No dogs, No Jews.」
(犬禁止、ユダヤ人禁止)という張り紙が堂々と貼られることになりました。

ヴィトン・ファミリーのうちの何人かは、ドイツ人相手にビジネスを拡大し、巨額の富を
得ることに成功しました。

また、占領下時代のドイツに降伏したフランスの首相、フィリップ・ペタンへの支援も
惜しまなかったと言われています。

当然、現代のモラルからすると非常識極まりないことで、後にLVMH社のスポークスマンが、
このことに関して、
「そのようなことがあったことについて否定はしない。しかし、報道は誇張され過ぎている」
というコメントを出しています。

ヴィトン・ファミリーがナチスドイツそのものを支持してビジネスを拡大したのか、
或いは単にビジネス目的でナチスドイツの言いなりになったふりをしたのかは定かでは
ありませんが、戦後ヴィトン社はこの問題で激しく叩かれつつも、再生の道を歩き始めます。

近代~今日のルイ・ヴィトン

戦後もヴィトン社は衰えることなく、繁栄を続けています。

ガストン・ルイ・ヴィトンの尽力により会社は存続し、1966年には愛らしい形が特徴の
「パピヨン」を発表し、このバッグは現在でも多くの人々に愛されています。

また、モノグラムやダミエラインのほかにも、1985年にはエピライン、1998年には
ヴェルニラインが発表されています。

トランク専門店が、現在では小物類(財布、手帳など)の殆どを手掛けるようになり、
全てに旧来からのダミエ柄、モノグラム柄の製品が取り揃えてあります。

現在では世界中にヴィトンのショップが点在し、日本でも表参道と神戸に立派な造りの店を
構えています。

ヴィトン社は1987年にモエ・ヘネシー社と合併し、「LVMH」傘下のブランドという位置づけに
なりましたが、そこからはビジネスの面でも本格的に事業拡大が成されました。

その主砲となっているのが、現在プレタポルテのデザイナーとしてヴィトンに在籍する、
マーク・ジェイコブズです。

LVMHが新たな戦力としてジェイコブズを加えてから、その事業への取り組み方にも多様性が
出るようになったような気がします。

ジェイコブズがプレタポルテ作品を発表することで、服飾産業にも進出しました。

創業以来衰えることを知らずに来たルイ・ヴィトンは、今も昔も変わらず、人々を魅了し
続けています。

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